腰や股関節(仙腸関節部および骨盤)の骨折について
骨盤骨折は、飼い主様にとって非常に重大な課題となります。骨盤は全身のバランスや歩行を支える重要な部位であり、適切な治療がペットの生活の質を大きく左右します。
骨盤骨折の原因と特性
犬や猫の骨盤骨折は主に交通事故などの大きな外傷が原因で発生します。
- 多発性外傷が多い:胸部や腹部への損傷が伴うことが多く、これらが命に関わる場合、優先して治療します。
- 非開放骨折が主流:骨盤は厚い筋肉に覆われているため、通常は外部に露出しない骨折が多く見られます。
- 複数部位の骨折が一般的:骨盤部の一箇所に骨折がある場合、他の部位にも損傷がある可能性が高いです。
骨盤の構造は頑丈ですが、大きな衝撃を受けると腸骨、寛骨臼、坐骨、恥骨が同時に損傷することが少なくありません。
主な骨折部位と治療法
1. 仙腸関節の骨折脱臼
仙腸関節は仙骨と腸骨が結合する部位で、通常ほとんど動かない関節です。この部位の骨折や脱臼は、骨盤腔の狭窄や股関節のずれを引き起こすため、早期治療が重要です。
症状
- 後肢が不安定で支えられない
- 強い痛みがあり触られることを嫌がる
診断
- レントゲンやCT検査で確認します。
治療法
- 軽度の場合:安静療法が有効です。
- 重度の場合:スクリューを用いて外科的に固定し、正常な位置に戻します。
2. 腸骨の骨折
腸骨は骨盤の主要構造の一部で、ここが損傷すると骨盤腔の変形や神経損傷を引き起こすリスクがあります。
症状
- 歩行が困難になる
- 骨盤全体の歪みが見られる
治療法
- 安定した骨折の場合:保存療法。
- 不安定な場合:プレートやスクリューを用いて骨を正しい位置に戻します。
3. 寛骨臼の骨折
寛骨臼は股関節の受け皿となる部分であり、損傷すると股関節が正しく機能しなくなる恐れがあります。
症状
- 後肢に力が入らず、歩行を嫌がる
治療法
- 軽症の場合:安静療法。
- 重度の場合:プレートを使用して外科的に修復します。
4. 坐骨の骨折
坐骨骨折は坐骨神経や膝関節屈筋群への影響が懸念されます。
症状
- 座ることを嫌がる
- 骨盤後方に腫れが見られる
治療法
- 軽度な場合は安静療法で治癒しますが、転位が著しい場合は外科的治療が必要です。
5. 恥骨の骨折
恥骨骨折は尿道や膀胱への影響が懸念されるため、適切な対応が必要です。
症状
- 排尿や排便に問題が出る
治療法
- 軽症の場合:保存療法。
- 重度の場合:外科的治療を行う場合があります。
全身への影響と治療の優先順位
骨盤骨折に伴い、以下のような全身的な影響が現れることがあります。
- 胸部損傷:肺挫傷、気胸、横隔膜破裂など。
- 腹部損傷:膀胱破裂や腸閉塞、血管系の損傷。
- 神経損傷:坐骨神経や腰仙骨神経幹が影響を受ける場合があります。
これらの影響がある場合、まず生命維持のための処置を優先し、その後に骨折の治療を行います。
治療後のケアとリハビリ
- 安静の確保
ケージレストを必要な期間続けます。 - リハビリテーション
温浴、軽い屈伸運動、スタンドエクササイズを取り入れます。 - 定期的な診察
骨折部位の回復を確認するため、獣医師の指導に従い診察を受けてください。