動物の二の腕(上腕骨)の骨折治療について

動物の二の腕(上腕骨)の骨折治療について

動物の二の腕(上腕骨)の骨折治療について

1. 上腕骨骨折とは?

上腕骨は、前肢の肩から肘にかけて存在する骨で、独特なS字状の形状をしています。この形状は、骨折が起こる場所や治療法に影響を与えるため、治療計画を立てる際に難しいです。特に、骨折は以下の部位で発生しやすいです。

  • 多近位端(肩に近い部分)
  • 骨幹(中央部分)
  • 遠位端(肘に近い部分)

骨折の原因には、以下のような事故や衝撃が挙げられます。

  • 高いところからの転落
  • 自動車事故
  • 他の動物との激しい衝突やけんか

2. 骨折の部位ごとの特徴と治療

(1) 上腕骨近位の骨折

近位端の骨折は比較的まれですが、特に若齢動物では骨端板(成長プレート)が損傷することが多いです。

  • 治療法: 骨端板の骨折には、K-ワイヤーを用いた固定が一般的です。また、複雑骨折の場合はプレートやスクリューでの固定が必要です。
  • 注意点: この部分は海綿骨が多く、治癒が早い傾向があります。ただし、インプラントが軟部組織を損傷しないよう慎重な対応が求められます。

(2) 上腕骨骨幹の骨折

骨幹部の骨折は、単純骨折から複雑骨折までさまざまです。

  • 治療法: 長い斜骨折や粉砕骨折では、プレート固定術が適用されることが多いです。特に骨幹部は形状が複雑であるため、プレートを骨に合わせて曲げる作業が必要です。
  • 注意点: 前肢が体重の60-70%を支えるため、固定の失敗が発生するリスクがあります。適切な固定と慎重な外科処置が必要です。

(3) 上腕骨遠位の骨折

遠位端の骨折は、関節近くで発生するため、特に治療が難しい部位です。

  • 治療法: 顆(関節部分)の骨折では、ラグスクリュー法やプレート固定法が用いられます。複雑骨折(T字型やY字型)では関節面の再建が重要です。
  • 注意点: 肘関節は複雑な構造をしており、術後早期に肘関節の運動を許容することで、線維症や強直(関節の硬直)を防ぐことが求められます。

3. 治療の流れ

(1) 診断

  • 視診と触診: 骨折の位置や状態を確認します。
  • レントゲン検査: 骨折の種類(単純骨折、粉砕骨折など)や重症度をしっかり把握します。

(2) 治療方法の選択

治療は、骨折の場所や種類、ペットの年齢・体格に応じて決定します。

  • 外科手術(プレート、スクリュー、K-ワイヤーなど)
  • 保存療法(ギプスや包帯固定)

(3) 術後のケア

  • 安静にさせる: 動き回らないように注意します。
  • 定期検診: 骨の回復状況を確認します。
  • リハビリ: 肘関節の早期運動が重要です。

4. リハビリと予後

上腕骨骨折の多くは適切な治療を行うことで良好な予後が期待されます。以下の点に注意してください。

  • 軽い散歩: 獣医師の指示のもとで開始します。
  • 運動制限: 激しい運動を避け、骨の回復を待ちます。