動物のモモ足(大腿骨)の骨折について

動物のモモ足(大腿骨)の骨折について

動物のモモ足(大腿骨)の骨折について

犬や猫に発生する大腿骨骨折について、専門的かつわかりやすく解説します。特に、大腿骨近位、中間部、遠位での骨折について、それぞれの原因、診断、治療方法を詳しく説明します。

1. 骨折の原因

大腿骨骨折の原因は外傷性と病的要因に分けられます。

外傷性骨折
  • 高いところからの落下
  • 車との衝突事故
  • 人との衝突や踏まれるなどの事故
  • 激しい運動や他の動物や物との衝突
病的骨折
  • 骨腫瘍や骨の弱化
  • 遺伝的疾患や成長異常
  • 骨粗鬆症

外傷性骨折では多くの場合、高速度損傷による粉砕骨折が発生し、病的骨折では骨質の脆弱化が原因となります。

2. 骨折の症状

ペットに以下のような症状が見られる場合、大腿骨骨折の可能性があります。

  • 強い痛みを訴え、鳴く、震えるなどの反応
  • 足を地面につけない、または動かさない
  • 腫れや内出血、足の変形
  • 歩行困難や足を引きずる動作

当てはまる場合、すぐに動物病院で診察を受けることが推奨されます。

3. 診断方法

大腿骨骨折の診断には以下の手順が取られます。

  • 問診:怪我の経緯やペットの行動を確認します。
  • 身体検査:視診、触診で骨折の可能性を探ります。
  • 画像診断
    ・X線撮影で骨折の部位、形状、程度を特定
    ・必要に応じてCTスキャンやMRIによる精密検査
  • その他検査:胸部X線や血液検査で併発損傷の有無を確認

診断により骨折のタイプ(横骨折、斜骨折、粉砕骨折など)が特定されます。

4. 治療方法

大腿骨骨折の治療は、骨折の種類や動物の年齢、体調に応じて選択されます。特に外科的治療が一般的ですが、軽度の骨折では保存的治療が適用される場合もあります。

外科的治療(手術)

外科的治療では、以下の方法が骨折部位に応じて選ばれます。

  • K-ワイヤー固定法
    ・骨端板骨折や若齢動物の骨折に適用
    ・ワイヤーを用いて骨を強固に固定
  • ラグスクリュー固定法
    ・大腿骨頸部骨折や裂離骨折に適用
    ・スクリューで骨を圧迫し安定化
  • テンションバンド固定法
    ・筋肉の力を利用して骨折部を安定させる方法
    ・大転子骨折や骨切り術に適用
  • プレート固定法
    ・粉砕骨折や大腿骨近位粉砕骨折に適用
    ・金属プレートを用い、長期的な安定を提供

保存的治療(非手術)

  • 骨折の程度が軽度の場合や、特定の条件でのみ適用されます。
  • ギプスや包帯で固定し、自然治癒を促します。

5. 術後管理

術後の管理は動物の回復を左右する重要なプロセスです。以下のようなケアが必要です。

動物病院での管理

  • 定期的な通院でX線検査を実施し、骨の治癒状況を確認
  • 必要に応じてリハビリや追加治療を実施

自宅での管理

  • ペットを安静に保つため、ケージや狭いスペースを使用
  • 指定された投薬スケジュールを守り、痛みや感染を予防
  • 栄養価の高い食事やサプリメントの提供で骨の回復を促進

回復期間

骨折の治癒には通常数週間から数ヶ月が必要です。個体差があります。

大腿骨近位、中間部、遠位骨折における留意点

大腿骨近位骨折

  • 高速度損傷では粉砕骨折が多く、治療にはプレート固定法が一般的
  • 若齢動物ではK-ワイヤーやラグスクリューの使用が多い

大腿骨中間部骨折

  • 外傷性の粉砕骨折が多く、整復不可能な場合には架橋プレート法を用いる
  • 骨の張力面にプレートを配置し、安定性を確保

大腿骨遠位骨折

  • 幼齢動物ではSalter-Harris骨折が一般的
  • 関節面の解剖学的整復と固定が求められる
  • クロスピン法やラッシュピン法が適用されることが多い