足首かかと(足根関節)の骨折について

足首かかと(足根関節)の骨折について

足首かかと(足根関節)の骨折について

足根関節の骨折は、犬や猫の後ろ足に起こる比較的まれな疾患ですが、特に競走犬や使役犬では一般的に見られる問題です。
足根関節の骨折に関する知識、診断、治療について、すこし専門的に説明します。

足根関節とは?

足根関節は後肢の足首に相当する関節で、踵骨(しょうこつ)、距骨(きょこつ)、中心足根骨、第一から第四足根骨で構成されています。この関節は、動物がスムーズに歩行し、ジャンプをするために欠かせない機能を担っています。

足根関節骨折の特徴と原因

足根関節骨折は、外力による直接的な損傷や不適切な動作による間接的な負荷が原因となることがあります。例えば以下のような場面で発生します。

  • 高所からの落下
  • 自動車事故
  • 激しい運動中の転倒やねじれ

特に競走犬では、走行中に旋回時の荷重が偏ることが原因となり、足根関節の骨折が発生しやすくなります。右旋回時には外側の右足根関節に負担が集中し、踵骨や中心足根骨に影響を及ぼします。

術前に考慮すべきこと

足根関節骨折は、多くの場合、複雑な構造を持つ足根関節全体に影響を及ぼします。診断と治療計画の段階では、以下の点が考慮されます。

  1. 詳細な診断
    高解像度のX線撮影(背腹像、側面像、斜位像)を行い、骨折部位や変位の有無を確認します。場合によってはストレスX線やCTスキャンを追加し、骨折の詳細な形状や関連する靭帯損傷を評価します
  2. 足根関節の安定化
    術前には、改良ロバート・ジョーンズ包帯などで患部を固定し、腫れを抑えながら安定化を図ります。この固定は、痛みの軽減にもつながります。
  3. 全身状態の評価
    外傷が他の部位に及んでいないか、またペットの全身的な健康状態(年齢や既往歴)を確認します。

外科治療とアプローチ法

骨折の種類や部位に応じて、外科的な治療法を選択します。

  • 距骨の顆骨折におけるK-ワイヤーの使用
    距骨の顆骨折では、K-ワイヤーを用いて骨片を固定します。この方法は、関節面を正確に復元し、関節機能を保つために特に有効です。
  • 踵骨横骨折に対するテンションバンドワイヤーの適用
    踵骨の横骨折では、テンションバンドワイヤー法を用いることで、骨片間の圧迫を促進し、早期癒合を実現します。この方法は、踵骨の安定性を高め、術後の再発を防ぎます。
  • 踵骨斜骨折におけるラグスクリューの適用
    踵骨の斜骨折では、ラグスクリューを使用して骨折部を強固に固定します。この方法は、骨片間の緊密な接触を確保し、回復を早める効果があります。
  • 踵骨の粉砕骨折におけるプレートの適用
    粉砕骨折が見られる場合、プレート固定法を用います。この手術は骨の形状と機能を復元し、足根関節の安定性を維持するために必要不可欠です。
  • 足根骨骨折におけるラグスクリューの適用
    第一から第四の足根骨が骨折した場合、ラグスクリューが使用されます。この技術により、骨折部を確実に固定し、関節機能の維持が可能になります。