動物の指(指節骨・趾節骨)の骨折について
指(趾)節骨の骨折とは?
犬や猫の指(趾)節骨は、足の指を構成する小さな骨で、怪我や事故によって骨折することがあります。骨折はペットにとって非常に痛みを伴うものであり、適切な治療が必要です。骨折の原因としては以下のようなケースが挙げられます。
- 高所からの落下や転倒
- 足を引っ掛けたり挟んだりする事故
- 車や自転車との衝突
- 激しい運動や遊び中の負傷
骨折が疑われる場合には、早期に適切な診断と治療を行うことが重要です。
診断と術前の検討事項
指(趾)節骨の骨折は、痛みや腫れ、不自然な歩行、軋轢音(骨がこすれ合う音)などの症状で見られることがあります。診断には通常のX線撮影に加え、斜位撮影(異なる角度からの撮影)を行うことで、骨折の詳細な位置や形状を確認します。
術前に考慮すべきポイント
- 骨折の種類と重症度:斜骨折、横骨折、裂離骨折など、骨折の種類によって治療法が異なります。
- 全身状態の評価:麻酔を安全に実施するために血液検査や心臓の評価を行い、ペットの健康状態を確認します。
- 手術の適応:骨折箇所が爪に近い末節骨の場合、治療が困難で断趾が選択されることもあります。
手術のための外科的アプローチ
指(趾)節骨は皮膚越しに触知しやすい構造をしています。手術では、骨の直上を切開するアプローチが一般的ですが、伸筋腱や屈筋腱への損傷を避けるため、内側または外側からのアプローチが推奨されます。
特に小型犬や猫の場合、骨のサイズが非常に小さいため、以下の工夫が必要です。
- 拡大鏡やヘッドライトを使用:手術視野を確保し、精密な操作を可能にします。
- インプラントの適切な配置:骨折の安定を最優先としながら、腱や靭帯の損傷を避ける配置を選択します。
骨折の種類ごとの治療法
骨折の種類に応じて、以下の治療法を選択します。
- 斜骨折
斜めに割れた骨折では、ラグスクリューと呼ばれる特殊なスクリューを使用して固定します。スクリューの直径は1.5〜2.0mmで、骨をしっかりと圧迫し、早期癒合を促進します。スクリューの長さや配置は慎重に選択し、腱への干渉を避けるよう配慮します。 - 横骨折
水平に割れた骨折には、ミニプレートを使用します。プレートは骨の外側に固定し、骨の安定性を高めます。この方法により、ペットが早期に通常の生活に戻れる可能性が高まります。 - 裂離骨折
腱や靭帯の強い引っ張りによって骨の一部が引き剥がされる裂離骨折には、テンションバンドワイヤーが使用されます。この技術は、腱や靭帯による引張力を効率的に分散させ、骨の癒合を促進します。
術後の管理とリハビリテーション
術後の管理は治療の成功に直結します。ペットが骨折箇所を再び傷めないよう、以下のポイントを守ります。
- 安静:ケージ内での生活を指示される場合があります。
- 定期的な診察:骨の癒合状況やインプラントの状態を確認します。
- 適切な保護具の使用:術後、副子や包帯を装着して骨折箇所を保護します。
ペットが完全に回復するまでには数週間から数ヶ月かかることがありますが、適切な術後ケアにより、痛みを軽減し、骨の再癒合を促進することが可能です。
指の骨折は、適切な診断と治療を行えば回復が期待できるケースがほとんどです。気になる症状があれば、当院までお気軽にご相談ください。ペットにとって最善の治療を提供するため、専門的な設備と知識を活用してサポートさせていただきます。
参考文献
- Smith, R.K. “Small Animal Orthopedics.” 2020.
- Johnson, A.L. “Fracture Management in Dogs and Cats.” 2018.