肘関節固定術について
肘関節は前肢の複雑な構造を持つ関節であり、骨折や脱臼が発生すると歩行困難や強い痛みを引き起こすため、適切な対応が求められます。ここでは、当院で行う「肘関節固定術」について説明します。
肘関節固定術とは?
肘関節固定術は、骨折や脱臼、重度の関節障害などを治療するための外科手術です。この手術では、特殊な金属製の器具(プレートやスクリュー)を用いて骨や関節を安定させます。これにより、痛みを軽減し、患肢の機能を改善することを目指します。
ただし、肘関節固定術では関節の可動域が失われるため、通常は他の治療法が難しい場合に選択される最終的な治療法です。手術は慎重に検討し、飼い主様と相談しながら進めます。
肘関節固定術が適応されるケース
以下のような症状や状況で、肘関節固定術が検討されます。
- 関節が極度に不安定で修復が困難な場合
- 慢性的な関節疾患が進行している場合
- 痛みが強く、他の治療法では改善が見込めない場合
- 交通事故や転倒による重度の骨折や脱臼
手術の手順
1. 術前準備
肘関節固定術は、高度な技術を必要とする手術です。術前に十分な診察を行い、レントゲンやCTなどの画像検査で骨折や脱臼の程度を確認します。手術計画では、関節の固定角度(通常は110度前後)を適切に設定します。
2. 手術の流れ
- 肘関節周辺の解剖学的構造を慎重に確認しながら、手術部位を露出します。
- 骨折部位を整復(元の位置に戻す)し、プレートやスクリューで固定します。
- 安定した固定が確認できた後、手術部位を閉じます。
3. 術後管理
手術後は痛みのコントロールや感染症予防のため、適切な薬剤を使用します。また、患部が安定するまでの間、動きを制限するための管理が必要です。
予後と注意点
肘関節固定術は、成功すればペットの痛みを大幅に軽減し、生活の質を向上させることが期待できます。ただし、手術には一定のリスクが伴い、以下のような注意点があります。
- 感染症:手術部位の清潔を保つことが重要です。
- 骨の癒合不全:骨が完全にくっつかない場合があるため、術後の経過観察が欠かせません。
- 二次的な関節炎:術後、固定した関節に負担がかかることで炎症が起こる可能性があります。