ネコちゃんの整形外科

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当院の整形外科治療実績

猫と犬の検査・診断の違い

猫と犬はどちらも大切な家族なのですが、検査や診断には、それぞれの異なる特性が関わります。

猫の骨関節疾患が抱える独特の課題

  1. 痛みの隠し方が上手
    猫は中程度の痛みを感じていても、その症状を隠してしまうことがよくあります。犬がすぐに異常を示すのに対し、猫はクールな性格から痛みを訴えることが少なく、飼い主様が異常に気づくのが遅れることがあります。
  2. 自由奔放な性格
    検査を行う際、猫は環境の変化に敏感で、犬よりも診察に協力的ではない場合が多いです。猫の歩行検査は、自宅での行動を撮影していただくことも有効です。

猫の骨や関節の特徴

  1. 柔軟性に優れた構造
    猫は関節炎や腫れが外見では目立たないこともあります。特に肩関節や股関節では、筋肉に隠れて症状が分かりにくい場合が多々あります。
  2. 肥満によるリスク
    体重が重い猫は、関節に大きな負担がかかり、骨関節炎の併発リスクが高まります。

猫と犬の違いを理解した検査・診断

  1. 環境や生活スタイルの影響
    猫は猫特有の外傷や慢性的な症状もあります。見逃さないためには、飼い主様からの詳細な情報が大切です。
  2. 診察時の工夫
    診察では、猫がリラックスできるよう最小限の拘束で検査を進めます。触診は痛みのない足から始めることもあります。

猫特有の骨関節疾患

  1. 骨膜性増殖性多発性関節炎
    珍しい非外傷性の関節炎で、猫では非常にまれに見られる疾患です。オスに発症リスクが高いとされています。
  2. 遺伝性や先天性疾患
    血統猫に多く見られる疾患で、特定の品種に特有の特徴を持つことがあります。例えば、股関節形成不全などが挙げられます。
  3. 骨肉腫
    比較的まれな骨腫瘍ですが、高齢の猫に発症することがあります。早期の診断と治療が重要です。

犬と猫の骨や関節の違いについて

私たちは犬と猫の骨や関節に関する特徴を理解することで、適切な診断や治療に役立てています。
ここでは、ご家族にも分かる犬と猫の骨や関節の違いについて説明します。

1. 体の使い方の違い

  • : 犬は歩行時に前肢へ体重を多くかける傾向があります。長距離の移動や持久力に優れた体のつくりが特徴です。
  • : 猫は後肢への体重負担が大きく、短距離を素早く移動する能力に特化しています。また、引っ込む爪をもつなど独自の体の構造を持っています。

2. 外傷の原因

  • : 活動的な性格が原因で、高所からの落下や交通事故など、大きな外力による怪我が多い傾向にあります。
  • : 猫の場合、高所からの転落や他の動物との争いが外傷の主な原因です。

3. 骨格や骨の形状

  • : 骨は頑丈で厚みがあり、大きな負荷に耐えられるように設計されています。
  • : 軽量化された骨格が特徴で、柔軟性が高く、素早い動きを可能にします。猫の骨は薄い皮質と大きな髄腔を持ちます。

4. 運動能力の違い

  • : 犬は直線的な動きが得意で、長時間走り続ける持久力に優れています。
  • : 猫は短時間で爆発的なスピードを出し、素早い方向転換が可能です。

5. 猫と犬の筋骨格の違い

猫の骨格は犬と比べて柔軟で軽量化されています。それによりしなやかな動きが可能です。

猫と犬の部位ごとの骨関節構造の違い

少々細かすぎるかもしれませんが(笑)。主な骨関節部位ごとの違いを簡潔にまとめました。

肩・上腕

  • 猫の肩甲骨には特徴的な構造(鉤突起や鉤上突起)が見られ、これらは手術時に重要なポイントとなります。一方、犬ではこのような突起は見られません。
  • 烏口突起(肩甲骨の一部)は猫で骨折しやすい部位です。
  • 猫の上腕骨には「顆上孔」という穴があり、この部分を通る神経や血管を考慮した外科手術が求められます。犬にはこの孔はありません。

肘・前腕

  • 猫では、肘関節周辺での骨折が犬に比べて少ないことが分かっています。これは、犬に存在する顆上孔が猫では見られないためです。
  • 猫の前腕は非常に柔軟で、回内・回外運動(45~55度の範囲)が可能です。この特性を考慮した手術や固定方法が重要です。
  • 一部の猫には、正常な解剖学的変化として種子骨が見られることがあります。これは骨棘や骨折片と誤認しないよう注意が必要です。

股関節・大腿部

  • 猫の大腿骨頭靭帯は骨端への血液供給を担い、骨折後の治癒に重要な役割を果たします。犬ではこの機能はそれほど顕著ではありません。
  • 猫の股関節周辺の筋肉(大腿筋膜張筋や外側広筋)は犬より幅広く、外科的アプローチには特有の技術が求められます。
  • 犬には存在する仙結節靭帯が猫にはありません。

膝・下腿

  • 猫では前十字靭帯が後十字靭帯よりも強靭で、靭帯断裂が非常に稀です。
  • 一部の猫の膝種子骨には石灰化が見られますが、これが臨床に影響することは少ないです。

足根

  • 猫の足根関節の側副靭帯は短く、関節脱臼や亜脱臼の治療時には特別な注意が必要です

脊柱

  • 猫には、犬に存在する項靭帯(軸椎と第一胸椎をつなぐ靭帯)がありません。この構造的な違いは、首の動きや異常の発生に影響します。
  • 猫の脊柱は柔軟性が高く、これは椎間板が脊柱全体の約20%を占めることに起因しています(犬では15~17%)。
  • 猫の脊髄神経は犬よりも長く、病変部位の影響範囲が少ない特徴があります。

犬と猫の骨折における違い―猫の骨の特徴と治療の要点

猫の骨折の治療を考える上では、犬との比較を通じて猫に特有の生理学的な特徴があります。ここでは、骨折の治療に影響を与える犬と猫の骨の違いを解説します。

1. 骨への血流の特徴

  • 猫の骨は周辺の軟部細胞により被害骨への被衡負荷を補働します。
  • 骨折時には、被害した骨臥から以外の周りの組織からの血流保持が自然な回復を支援します。

  • 犬の骨は骨膜や粘々とした血管組織により被害骨臥への被衡流れが変化することがあります。骨の治療時には周辺の軟部細胞への貢献が大事な要因となります。

2. 成長板の構造と働作の違い

  • 成長板は独特なフラットな構造を持ち、小型な体格と縮小した成長量が見られます。
  • 赤貴な成長期に被害が発生した場合、Salter-Harris型の骨折の危険性が高まります。

  • 成長板が角形構造を持ち、成長量の高さから疾屈の危険性を抱きます。これにより、成長期中の犬の骨折は長期の治療を要する場合があります。

猫の靭帯と腱の疾患について

猫が歩き方に違和感がある、動きが鈍くなったといった症状は靭帯や腱に関する問題が原因である可能性もあります。

靭帯と腱の役割

靭帯は骨と骨をつなぎ、関節を安定させる大切な役割を担っています。一方、は筋肉と骨をつなぎ、関節の動きを補助します。これらは猫の活発な行動を支えるために大切です。

靭帯の特徴
  • 骨同士を結び、関節が過剰に動かないようにサポートします。
  • 捻挫や裂離骨折(靭帯が骨から剥がれる損傷)が代表的な疾患です。
 
腱の特徴
  • 筋肉を骨に付着させ、関節の動きをスムーズにします。
  • 腱断裂や腱症(腱の慢性変性)が時折見られます。

猫に見られる靭帯・腱の疾患

猫では靭帯や腱に関する疾患はあまり多くありませんが、以下のような問題が発生することがあります。

靭帯の損傷
  • 捻挫: 靭帯損傷です。
  • 裂離骨折: 靭帯が骨から剥がれ、骨片が伴うことがあります。
 
腱の損傷
  • 腱断裂: 特にアキレス腱で見られることがあり、外傷や老化が原因となることがあります。
  • 腱症: 腱の慢性的な炎症や変性が見られることがあります。
 
その他の問題
  • 腱裂離: 腱が骨から引き剥がされる損傷で、小さな骨片を伴う場合もあります。
  • 転移: 腱が本来の位置からずれることもまれにあります。

犬との違い

猫と犬では、靭帯や腱の疾患に違いがあります。

猫の場合
  • 小型で軽量な体格のため、腱や靭帯への負荷が犬よりも少ないです。
  • 靭帯や腱疾患は治癒に時間がかかる場合があります。