皮膚科

皮膚科

皮膚科について

皮膚疾患はとても身近な病気であり、病院に来院される目的として、最も多い病気の一つです。

正常な皮膚について

健康な皮膚は本来バリア機能を持っており、皮膚の細胞が常に新しく再生されることで維持されています。
皮膚の細胞は約21日でターンオーバー(生まれ変り)されます。
皮膚は皮下組織まで含めると体重の約2割を占め、摂取した蛋白質の約30%が皮膚の維持に利用されています(小型犬における換算)。

皮膚が病気になると

皮膚疾患は命に関わることは少ないと軽視されがち!ですが、かゆみや脱毛、時には出血や化膿など動物が生活していく中で、その質を大きく下げ、飼い主様に大きく負担となってしまうことが多々見受けられます。
一方で、皮膚疾患は皮膚だけを治療して治るものは少なく、獣医学の発展や動物の高齢化が進んでいる昨今、診断や治療が困難になっている病気の一つでもあります。

当院のこころみ

当院では皮膚症状について、皮膚を一つの臓器と考え、多角的に評価・診断を行い、他科疾患とも関連を十分に考えながら、総合的な治療を行っています。
また、皮膚のトラブルは環境の改善や皮膚のお手入れ(例えば保湿)、そして食事やビタミンを変えるだけで良くなる子も沢山います。

トリミング部門と協力

定期的なスキンケアが必要な病気が多いので、美容だけでなく、医療の側面からもトリミング部門と協力しながら治療もご提案しています。

主な皮膚科外来の疾患

  • 膿皮症
  • 脂漏性皮膚炎
  • アトピー性皮膚炎
  • 脱毛症X(アロペシアX)
  • 外耳炎
  • 皮膚糸状菌症
  • その他

  • 皮膚心身症(猫の心因性脱毛)
  • 好酸球性皮膚炎
  • ニキビダニ症
  • 疥癬
  • その他

症状

  • 痒い
  • 赤い
  • ジクジクしている
  • フケっぽい
  • 脂っぽい
  • 脱毛
  • 噛んだ跡がある
  • 耳が臭い、耳を掻いている

気を付けたい犬種や猫種

  • ウエストハイランドホワイトテリア、アトピー性皮膚炎
  • シーズー、脂漏性皮膚炎
  • ポメラニアン、脱毛症X(アロペシアX)
  • フレンチブルドッグ、膿皮症
  • アフガンハウンド、全身性毛包虫症
  • スコテッシュフォールド、外耳炎
  • ヒマラヤン、皮膚真菌症
  • ペルシャ、皮膚真菌症
  • シャム、心因性脱毛
  • コーニッシュレックス、マラセチア皮膚炎

検査~治療の流れ

問診

直近の症状から古い病歴の聴取、使用薬剤(外用薬、シャンプー含む)、食事歴、飼育環境など詳細に聞き取る

身体検査

皮膚病変だけでなく、聴診や触診など入念な身体検査を行う

臨床検査

細胞診検査、毛検査、耳垢(外耳炎)、追加検査として、血液検査、内分泌検査、画像検査、細菌・真菌検査、IgE検査、皮膚病理検査など

診断

簡単な検査から検査結果に応じて原因が特定でき、確定診断できる場合もあります。
また、原因が複数あったり、慢性化している時は、治療を行いながら原因を除外して確定診断できる場合、そして、より積極的な検査を必要とする場合があります。
皮膚の異常は内臓や内分泌器官の不全の結果として現われることもあり、またアレルギーに関してはアレルギーの原因を特定出来ないと、対症療法での対応が続くことになります。

治療方針の相談

検査結果からその子に応じた適切な治療を実施します。

皮膚についての話(環境、体質、皮膚の状態)から治療が決まります。
つまり、その子の病態だけでなく、ご家族の状況に合わせて、オリジナルの治療プランを組み立てます。
理由はご家族の協力と理解が皮膚の治療にはとても重要です。
また、病気のステージ(進行程度)によって治療法が変わります。
特に外耳炎などは早期発見で簡単に治りますが、放置しておくと細菌感染で重篤化する可能性もあります。
当院ではトリミング時に皮膚の状態、外耳の検査も実施しております。
簡単な耳掃除でずーっときれいな耳でいられます。

代表的な病気の原因や症状

膿皮症

暖かい季節になりやすい膿皮症は、皮膚に常在しているStaphylococcus intermediusが何らかの原因で異常繁殖し、発疹や痒みなどの皮膚症状が現れます(現在ではこの菌は多くの人間に感染している黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)とは違う種類であることが分かっております)。
膿皮症は皮膚の表面にできるもの(表在性膿皮症)と深い所にできるもの(深在性膿皮症)の2種類があります。
梅雨といった環境的な要因、アトピー性皮膚炎や脂漏症といった他疾患が要因となっていることなど様々ですので、原因を突き止め、正確な治療をすることが要求されます。

脂漏性皮膚炎

皮脂は、皮膚を保護する役割を果たしています。
その皮脂の分泌が多くなり過ぎたり、少なくなり過ぎたりすると脂漏性皮膚炎が起こります。
皮脂腺の働きが悪くなると、皮脂の分泌が悪くなって、皮膚が乾燥します。
これを乾性型と呼びます。逆に皮脂が過剰に分泌されると皮膚がベタベタして脂っぽくなります。
これを脂性型と呼びます。
症状は耳、目や乳頭の周囲、背中、腹部によく見られます。
フケが出たり、臭いがしたりするのが特徴です。
原因は、内臓の異常、寄生虫や真菌による皮膚炎、ビタミン・ミネラルの不足、脂肪分の不足などでも起こります。
また、アレルギーの治療でステロイド剤を用いた時に発症することもあります。
そのため総合的に検査を行い、多角的な治療(スキンケア含む)が必要です。

犬アトピー性皮膚炎

犬のアトピー性皮膚炎は、遺伝的な影響を受けた、かゆみを伴う皮膚疾患のことです。
かゆみの原因は皮膚のバリア機能に異常があるため起こり、かゆみのため掻くと益々バリア機能は破壊されます(二次的な皮膚病)。
痒みを伴う皮膚疾患には、ノミアレルギー、疥癬、毛包虫症、膿皮症、マラセチア、食事アレルギーなど様々ありますが、これらの疾患を除外することで診断ができます。
また、アレルギー検査や除去食試験を行うこともあります。

診断のポイントは、

  1. 好発犬種(柴、シーズー、ウエストハイランドホワイトテリアなど)
  2. 発症部位(顔面、耳介、腋窩、腹部、鼠径、肢端など皮膚が薄い部位)
  3. 臨床症状(掻いた痕、赤み、色素沈着、脱毛など)  
  4. 発症年齢(一般的に6カ月〜3歳頃に発症)

などが挙げられます。

治療には内服+外用+環境浄化そしてストレスやスキンケアが有効です。
この病気は完全には治らない厄介な病気で、長期間の治療になります。
治療薬も色々あり、状況に応じてかゆみ止め、炎症を止める薬、精神的に有効な薬、アレルギーを止める薬などワンちゃんの状況を見て最適な治療法を選択できます。

最近の話題:アトピカでも効果のなかった症例には「サイトポイント」

という画期的な新薬(インターロイキン-31に対するイヌ化モノクローナル抗体)も2019年から日本でも使えるようになりました。
今までなかった、根本的に「かゆみ」を止める薬です。
今までもどうしても治らなかった犬アトピー性皮膚炎には朗報です。
是非ご相談ください。

脱毛症X(アロペシアX)

原因不明の犬の脱毛症で、胴体の部分に痒みを伴わない脱毛がおこる病気です。
ポメラニアンに多いのが有名です。
鑑別疾患を除外するため、血液検査や内分泌検査で異常がないことを確認する必要があります。
発毛を促進するための種々の治療法が試みられていて、部分的に改善する場合も報告されています。
ハートワン動物病院では多くの脱毛症Xの症例を経験しており、成功例も数多く出ております。脱毛は治らないと諦めず、是非ともお待ちしております。

外耳炎

外耳炎とは、耳の穴の入口から鼓膜までの外耳道の炎症です。
耳道内の湿度と温度が病状を更に悪化させます。原因は細菌や真菌(カビ類のこと)感染、ダニ、耳垢の蓄積、耳穴の中の密生して絡み合った毛、耳に入った水、耳の形などが挙げられます。
正常な耳では、鼓膜付近の脂線の分泌物や角化物の混合物は耳垢になり、本来自然に外部に排泄されていきます。
鼓膜付近では水分が多く、外耳道口付近ではより脂っぽくなります。
この時点で、耳を正しくケアしてあげればよいです。
犬(特に垂れ下がっている耳)や猫の耳は湿っぽくて温かく、脂や耳垢を含んでいるので細菌や真菌(酵母類)が発育しやすいです。
診断は耳鏡を用いて行います。感染の有無と原因(細菌や酵母)は顕微鏡で分かり、診断に合わせた治療が大事になります。
重度の外耳炎は痒がって、耳を引っ掻いたり、壁にこすり付けたりします。更にひどくなると痛みが伴ってくるので、耳のまわりを触るだけでも嫌がるようになります。これは、可哀そうです。
外耳炎を放っておくと、炎症が中へと進行し、中耳炎や内耳炎になる危険もあります。鼓膜を失う子もいます。
外耳炎になってからの治療はもちろんですが、普段から耳のお手入れをしてあげることは予防になります。
当院は耳研究会に所属し、オトスコープという特殊な耳専用硬性鏡カメラと治療器具を使用して「治す治療」も行っております。

疥癬

ヒゼンダニによって起こる皮膚病です。
詳しくは、犬では疥癬虫(Sarcoptesscabiei var canis)感染、猫では猫疥癬(Notedras cati)による感染症です。
激しい痒みや脱毛を起こし、フケがたくさん出てきます。
好発部位は耳介辺縁・肘・膝です。
疥癬に感染すると、ダニが皮膚にトンネルを掘り、卵を産みます。
卵は幼ダニ、若ダニ、成ダニと成長し、また感染します。
ライフサイクルは2〜3週間と言われています。
今は良い治療薬があり、治る病気です。
ぜひ、ご相談ください。
人にも感染しますのでご注意ください。

皮膚心身症(猫の心因性脱毛)

精神的な原因による猫の脱毛を言います。
症状は皮疹のない境界明瞭な脱毛であり、常に舐める行動を伴い猫自身が毛を舐め取っていると考えられます。
何らかの飼育上、家庭内あるいは環境上のストレスが考えられます。
主にお腹の横や真ん中など、境界明瞭で皮疹が全く見当たらない脱毛です。
多くは手のひら程度の大きさ、皮膚の色は平常です。
治療法は、問診による飼い主様自身、身の回りの環境、そして飼育方法から始まります。
また、飼い主様が気が付かない病気があるかもしれないので、全身の詳細な検査を行うこともあります。
様々なオリジナルな治療プランを立てて、時間をかけて治していきます。
猫のストレスを解消する「フェリウェイ」というフェロモンが有効なこともあります。
「フェリウェイ」はスプレータイプとお部屋に拡散する装置タイプのものがあります。
猫ちゃんの状況により使い分けできます。
なかなか簡単には治りません。
ぜひご相談を、お待ちしております。

ニキビダニ症

毛包虫(Demodex canis)が毛包内で増殖する結果起こる病気です。
犬および猫で発症しますが、犬では頻繁に認められ、猫ではまれです。
毛包内で炎症が起こると二次感染により悪化することがしばしばあります。
犬では目や口の周り、胴体、足に病変が出やすく、治療には数か月を要することもあります。
子犬子猫では治りますが、免疫が下がった動物、ステロイド治療している動物、そして高齢動物では治療が難しいと言われています。
良い薬があるのでご安心ください。

ざ瘡

いわゆるニキビです。
ネコちゃんに多く見られますが、ワンちゃんにも起こります。
下顎にできることが多く、口唇周囲にできることもあります。
軽症の場合は、顎にポツポツと褐色やこげ茶の点々ができます。
何らかの原因で細菌等の二次感染を起こすと炎症が起こり、場合によっては重症化する可能性があります。
顔にできるので毎日ネコちゃんを観察していれば気が付きます。
悪化したらおいでください。
良い薬があります。

真菌について

水虫菌(皮膚糸状菌)もワンちゃんネコちゃんに感染します。
Microsporum canisが多くの犬に感染します。
canisは犬のことですが、猫の真菌症の原因も殆どはこのMicrosporum canisと言われています。
この水虫菌は人にも感染する厄介な真菌です。
症状は人間の足の指のじくじくしたのと違い、脱毛やフケの多い病変となります。
いわゆる人の乾燥型の水虫といった感じです。
人と同じように痒がったりもします。
ウッド灯で直ぐ判ることもあります。
直接皮膚から採取したサンプルを顕微鏡検査して診断できます。
更に培養することもできます。
薬は塗り薬、シャンプー、飲み薬など良いものが沢山あります。
また、真菌には糸のような形の水虫菌である糸状菌と違い、丸い形の酵母もいます。
その内の1つ、マラセチア(Malassezia pachydermatis)は、正常な皮膚にも住み着いていますが、何らかの原因で免疫が落ちている場合にこの菌は増殖します。
その結果、この酵母が関与して膿皮症がなかなか治らない、アレルギー性皮膚炎も全然良くならない、といったことが起こります。
全体像を把握できれば、良い薬を提案できます。
ご安心ください。

舐性皮膚炎(しせいひふえん)

文字どおり舐めることによって生じる手先、足先等の舐め崩したような外傷性の皮膚炎です。
犬も猫も起こりますが、中年期の大型犬に好発すると言われています。
本症の特徴としての頑固な行動原因は皮膚科的原因、非皮膚科的身体的原因、精神的原因に区別され、さらに皮膚局所の二次感染も関与することがあります。
原因を見つけることが大事になります。
何らかの原因で発症し、その後皮膚炎になり、負のスパイラルに入り込み悪循環に陥るのです。
原因はともあれ、舐性皮膚炎が既に発症している場合、対処法を考えなければなりません。
それには実際の皮膚を観察したり、飼育環境やフード、家族関係など可能な限りの情報を集め、飼育環境を変えたり、薬で気分を変えたり、色々な対症療法があります。
まずはご相談にいらして下さい。