循環器科について
近年、獣医療の発展により動物も人と同様に寿命が延び、それに伴い心臓疾患も増加しています。心臓病は、腫瘍(がん)や腎臓病と共に、命を脅かす「三大疾病」と呼ばれるようになりました。
心臓病は初期段階では症状が出ないことも多く、また、犬や猫の心臓病の多くは進行性で年齢とともに悪化するため、ご家族様が症状に気づかれる時には、すでに状態が進行していることも少なくありません。
身体検査で発見できる場合もございますので、定期的な健康診断をお勧めしております。
早期発見し、的確な診断・治療を行うことが大切です。
主な循環器疾患
犬 | 猫 |
---|---|
僧房弁閉鎖不全症などの弁膜症 | 肥大型心筋症 |
拡張型心筋症 | 拘束型心筋症 |
拡張型心筋症 | |
分類不全型心筋症 |
こんな症状がでたらご来院ください
- 咳をする
- 呼吸が荒い
- 散歩中に立ち止まる事が多い
- 苦しそうにしている
- 運動を嫌がる
- 疲れやすい
- ふらつく
- 失神する
- お腹がはってきた
気を付けたい犬種・猫種
当院で行う検査
問診
不必要な検査は動物への負担になる場合もございますので、まずはしっかりと問診を行い、普段の様子や症状などを把握させて頂きます。
(症状や経過を時系列で紙に書いてご用意いただきますと、症状の把握や診察をスムーズに進めることができます。また、口頭でのご説明が難しい症状の場合など、動画をご用意いただきますと貴重な情報源となります。他の医療機関様で受信された際の検査データなどがございましたらご持参ください。検査の重複を回避することで時間短縮や費用を抑えられる場合がございます。また、より迅速かつ的確な診断に繋がります。)
聴診
心臓の雑音などをチェックします。
血液検査
近年では、心臓疾患の疑いや重症度をある程度調べられる項目もございます。
血圧検査
心臓から送られた血液による血管の圧力を測定します。心臓疾患により血管の血液に対する抵抗の変化をチェックします。
レントゲン検査
心臓の形や大きさ、肺、血管の太さのチェックをします。
心電図検査
不整脈の検出、心臓の拡大のチェックします。心臓もしくは他の疾患による血管への負担をチェックします。
心臓超音波検査
心臓内部の構造、大きさ、血流をチェックし、心臓の機能を把握するための重要な検査です。
この検査により、心臓病のタイプ、重症度、治療効果の確認をします。
正常な猫の心臓の
レントゲン肥大した猫の心臓の
レントゲン
代表的な病気に対する、当院の治療
僧帽弁閉鎖不全症
心臓は、4つの部屋で出来ており、上側の2つの部屋(心房)と下側の2つの部屋(心室)がそれぞれ順番に縮んだり、膨らんだりすることで、血液を体全体に巡らせるようにします。
僧帽弁とは心臓の左側にある2つの部屋を隔てる弁であり、血液が逆流を防ぐ役割をしています。
僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁が年をとるとともに衰えてしまい、充分な役割を果たす事が出来なくなる事で、全身に流れるべき血液が逆流してしまう病気です。初めは、心臓の雑音のみで、目立った症状はありませんが、徐々に運動が出来なくなってきます。
病気が進行すると、失神したり呼吸困難を起こし、血液が逆流した事で起こる肺水腫という肺に水が溜まる病気を引き起こします。
治療
早期であれば、薬により病気の進行を遅らせる事が出来ます。
また、外科的な手術で治療する場合もございます。
肥大型心筋症
病名の通り、心臓の筋肉が厚くなって、肥大する病気です。
筋肉が厚くなると、4つある心臓の部屋の内、下側の部屋(心室)が狭くなってしまいます。
そのため、血液が滞ってよどんでしまうために血栓(血の固まり)が出来る事により血栓症を起こします。
無症状から始まり、元気がなくなったり、咳をしたり、胸や肺に水が溜まる事で呼吸困難、失神、突然死などの症状がでる場合があります。また、血栓症によっては、肢の麻痺を起こすこともあります。
治療
内科的な治療が一般的です。
肥大した心臓は、血液を全身に送る力を強くする(血圧が上がる)ため、負担がかかります。
そのため、血管を拡張させる薬や心臓の機能を抑える薬により症状を和らげます。
血栓が起こっている危険性がある場合は、血管を詰まらせる可能性があるため、注意が必要です。
心室中隔欠損症
先天性の病気です。
心臓の左右に部屋を分ける中隔と呼ばれる壁に穴が空いている状態を言います。
穴が小さい場合は症状が見られない事がありますが、元気がない、咳をしている、呼吸困難などの症状を引き起こします。
治療
内科的な治療で症状を抑える事は出来ますが、病気の進行は止める事が出来ません。
そのため、外科的な手術により穴をふさぐ必要があります。